組みの中にこの研究結果を取り入れる。 ・アルコールと暴力の関係、およびアルコールと他の薬物の相互作用について対処するよう、世界的な視点からイニシアチブをとる。 ・男女別のアプローチをより優れたものにする。特に、女性特有のニーズに対し、より適切に対処する。
結論 WHOではアルコールの問題を、全ての社会に関わる大きな公衆衛生上の問題であると認識している。従って政策やプログラムは、飲酒が健康に及ぼす危険性について信頼できる科学的事実を土台として作成しなければならない。また、異なる社会において、それぞれどのような危険性が主にあてはまり、どのような危険が少ないのかを区別しなければならない。この点を考えると、公衆衛生増進の目的でアルコール政策をつくるということは、例えばタバコに関する政策をつくるのとは大きく異なり、はるかに複雑である。タバコの場合とのような使用法であろうと、常に健康面で有害であるからだ。従って、政策の枠組みをつくる際、全体的なアルコール消費量に加えて、飲酒形態も考慮に入れなければならない。どちらの要因もアルコール関連の危険性を高める原因となるからだ。 WHOでは今後、各国がアルコール消費に関するいわゆる「安全限度」を定義する際、現在一般に用いている公衆衛生基準を更に見直すことになるであろう。安全限度は、「どの程度の飲酒量なら、飲み手の危険度が酒を飲まない人の危険度を上回らないか。」という問いに答えるという形で判断されてきた。しかし、この基準が政策づくりの土台となるのに本当に適切であるかどうかは疑問である。むしろ、「どのくらい飲めば危険度が増し始めるか。」という問いについて更に深く考慮しなければならない。基準を見直すことにより、図3に示す通り、1日量として推奨する飲酒量は現在の「安全な飲酒」のガイドラインによって提唱されている量よりはるかに低いものとなるであろう。 程々の量のアルコールには虚血性心疾患による死亡の危険性を低下させる作用が確かにあるように見えるが、全ての成人に対して飲酒を勧めるのは良くないであろう。いかなる理由であれ、酒を飲まないという選択をしている人に対し、飲酒をするよう圧力をかけてはならない。すべての開会に共通する飲酒がらみの問題のみを考慮すれば、全ての社会に対し、普遍的に飲酒を推奨するような政策は、百害あって一利無しであろう。
参考文献 英国医師Holman CDJ,MllneE,WinterMG,HulseGK,CoddsJP,BowerCl,CortiB,de KlrrkN,KnuimanMW,KurinczukJJ,LewinGF,RyanGAオーストラリアで疾患および死亡の原因となった薬物の数量化1995年度版(The quantification of drug caused morbidity and mortality in Australia,1995 edition.)Commonwealth Department of Human Services and Health,Canberra,1995.
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